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足元触れたのは記憶の揺らぎ
命の声に出逢い
魂の夜に立つ
川辺の灯り
ひとつ 流れる夢に
辿り着ける場所を求め
ふたつ みっつ
浮遊する子らよ
迷い疲れたでしょう
この腕の中で開花なさい
終わり方を選べなかった
あなたが見た空に届くよう
星の花と化し咲きましょう
水面に集うのは光の蕾
芽吹く時をささやき
舞い踊る波を抱く
願いを聞いて
ひとつ ほころぶ花を
在るべき場所へ導いて
ふたつ みっつ
還り着く子らよ
待ち詫びたことでしょう
この腕の先へお往きなさい
夜に満ちるぬくもりが今
あなたを守る愛となるよう
星の花と化し咲きましょう
祈りは輝きを取り戻して
命は空の一粒となる
そこに残されたのは…
川は流れる
ただ静かに

夜の川、川幅はさほど広くはない。光のない無明の夜である。
川のほとりにひとりの女性。
蛍のようなかそけき光が、1つ、また1つ、明滅しながらふわふわと宙に浮きながら、川の上流のほうからゆるゆると流れてくる。
川に沿ってやってきたその光たちは、それぞれ女性の近くにたどりつくとその動きを静かに止め、その場で浮遊しはじめた。
水面にいくつもの光が灯ったころ、女性はおもむろに腕を伸べる。
優美なその動きに誘われるように微かな光たちが水面に触れると――光は花の蕾に変じた。
突如水面に結ばれた、たくさんの蕾、蕾、蕾。
その中を、女性がゆるやかに舞い踊る。
蕾たちは、弱く光を放ちながら、女性が舞うごとにふくらみ、ほころび、開いていく。
やがて水面に花が満ちた時、女性がすっと天を指すように手を伸べると、水面が天に映し出され、暝天に星空が現れた。
――次の瞬間、花々と女性は幻のように消え失せ、後は静かに、川がただ流れていくだけだった。
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